2010年9月×日、長官より緊急指令が下りた

指令:きのえ温泉で裏風俗の捜査をせよ

早速、捜査官が手拭いを持って船に乗った。
なお、以下のファイルはすべてノンフィクションであることに留意されたい


きのえ温泉。聞いたことないだろう。それもそのはず、この温泉は瀬戸内海に浮かぶ小島にあるのだ。しまなみ海道からも外れており、船でないと行くことができない。そこに怪しい旅館があるという。



情報源はタレコミだ。

・・・また愛媛県沖に浮かぶ広島県の大崎上島という離島で、竹原保健所管轄木江旅館組 合という看板を掲げた旅館を発見し、半扉の旅館を発見いたしました。広島に足を 運ばれた際にはぜひ捜査のほどよろしくお願いいたします。では。



このタレコミがきた当時は、どうせガセネタだと思っていた。瀬戸内海の大崎下島といえば、おちょろ舟(娼婦を乗せた小舟が停泊中の大型船に乗り付けセクースを行うというやつ。かつての日本に存在した売春の一形態)伝説の島だ。でも、大崎下島は過去の遺物になっているはずで、私の捜査活動にはババアが出てくることが多いとはいえ、いくらなんでも江戸時代や明治時代の女がでてくることはありえない。200歩譲って戦前の女までだろう。

だから捜査するつもりもなく、このタレコミは大量のメールに埋もれて存在すら忘れていた。で、今年の夏になって田舎の島めぐりをしたい気分になったので、そういえばとこのメールのことを思い出してほじくりだしてみた。

改めて読んでみると・・、なに?大崎上島?下島じゃないのか??あわてて瀬戸内海の14万分の1の地図を出して調べてみる。すると大崎下島の北側には大崎上島という島があるではないか。そんな島があるなんて知らなかった。

まさかと思ってネットで調べてみると、大崎上島の「きのえ」は良湾で、風待ちの港としてにぎわっていたという。 そして!検索から抽出されたサイトを覗いて見ると、そこには遊廓建築と酷似した3階建ての木造建築物が亭亭と並んだ画像が掲載されているではないか!ネットでの情報では、江戸時代どころか第2次大戦後しばらくまでおちょろ船は存続していたという。正式な?遊廓があったのかはわからないが、「木ノ江遊廓」という単語が出てくる資料もある。

地図を詳しく見ると・・・!地図のきのえ港の部分には温泉マークがついており「きのえ温泉」と書かれている。

「温泉街には裏風俗が高確率で存在する」

これはもしかしたら・・・・・、ありえるぞ・・・。これ以上はネットではわからない。だが、現場へいけばわかる。ということで、緊急捜査を行うことにした。


大きな地図で見る

地図を見ればわかるが、島自体は大きいのだが、しまなみ海道から外れている。




夏の暑い日差しがやっとおちついたころ。捜査官はフェリーに乗っていた。おちょろ船伝説の捜査をするのだからフェリーを使うのは当然というもの。高速道路なんて下衆いものを使ってはブルースを感じることができない。大阪南港から22時30分発のフェリーに乗った。寝ている時間を利用して移動し、目的地に着いて朝から行動する。ガソリンをまき散らして夜通し高速道路を走る人は馬鹿じゃないかと思う。「四国の田舎にいくのに日本なのに4時間もかかる。だから高速道路をここにも造らないといけない」と力説する政治家がいたが、ああいうのは早く死ねばいいと思う。

 このドラテクに萌える

オレンジフェリーは豪華でいい。特殊手荷物料金込みで片道8500円だ。フェリーの2輪料金は車長ではなく排気量で決まるからCB1300に乗ってる人とかかなり損した気分ですよね。カワサキとかハーレーの人は得した気分になれますけど。

 明石海峡大橋


よくあさ6時に東予港へついた。東予から今治港へ移動し、またフェリーにのる。フェリーの待ち時間は4時間。1日に4便しかないのだ。だって田舎だし。風俗店の待合室だったら1時間でも無理だがこういう所なら4時間でも待てる。港で寝てたら乗船時刻になった。

 朝ご飯にアワビ・・

 ちっちぇー船

 ついた


昼くらいに、きのえに着岸。ついにやってきたぞ。まずは港から徒歩で散策することにした。あるとしたら港からすぐのはずだ。

あ、あっさり発見

 

なかなかのブルース指数

 

 

写真撮影していると、向こうからおじさんがあるいてきた。たしか同じフェリーに乗ってた人だ。こちらはサングラスに上半身裸みたいな格好で、廃屋に向かって夢中でシャッターをきったり、旅館の扉に顔面を押しつけて中をのぞき込んだりしていて、変質者と思われたかもしれない。だが、おっさんは会釈をしてきた。きっと、街歩きが趣味で、私に同じ匂いを感じたのだろう。 でも、私は街並みじゃなくて非合法なセックスに興味があるんですよ。残念ながら微妙にベクトルが違いましたね・・。すいません。




半開の扉ってのはこれのことかな。でも、これはないですね。レーダーが一切反応しません。

つづいて温泉街へ行くことにした。港から数キロ離れている。

・・・温泉街じゃなかった。近代的な温泉宿が1軒あるだけだ。捜査終了ですね。まあ、こんなもんでしょう。ここで化石化したババアが出てきたらそれこそ「マンモスが生きていた!」くらいのスクープじゃないか。ありえない。当局の報告書はリアルドキュメントであって学研ムーではないのだ。今回の捜査はちょっとロマンが多きに過ぎたようだ。

捜査が終わったので温泉に入ることにした。いやあ、温泉街紀行で温泉に入るのはたしか2回目ですね。露天風呂からの眺めが素晴らしい。
http://www.hotel-seifukan.co.jp/index.html←この風呂に入ったんですよ。羨ましいでしょう?あ、これ勝手にリンクね。

景色は良いのだが泉質がいまいちですね。海水を温めた感じ。しょっぱい・・。




大崎下島にも渡ってみた。

ええ、ここも田舎ですね。むりやり古い建物を観光地にしてる田舎。京都人的には一番たちの悪い観光地です。資料館みたいなものがあったので、みどころはこれくらいですね。灯台と。すぐ撤収することにした。しかし町をあげて遊廓跡を観光地にする姿勢は評価に値しますよねえ。どうせなら現役にしたらもっと町の財政も潤いますよ。

 見どころはここくらいか

 超カッコいい交番

 超カッコいい乗り物

 これ昭和何年でしょうか?

 

遊廓「若胡子屋」跡。かつてここの女が、お歯黒がつかなかったので煮えたお歯黒を禿に飲ませて殺したとか。そのときの手形が今でも残ってるらしい。中に入りたかったが臨時休館で入れず。



このスナックでホステスの女と自由恋愛とかすごくブルージーですね。「主人は10年前に海の事故で亡くなったんです・・」とか。妄想広げすぎですか?

さて、日も暮れてきたし帰ろう。帰りはしまなみ海道で本州へ渡ることにした。橋を渡れるように原付2種できたのはこのためだ。原付と原付2種は四国から本州まで510円で渡れる。



渡った先の広島県の鞆の浦や糸崎にも遊廓があったということで、今でもそれっぽい建物が残っています。しまなみ海道の遊廓跡をめぐる旅とか楽しそうですね(オレだけか?)。


で、広島から大阪まで原付で帰りました。とんでもなく遠かったです・・・。



温泉データ

きのえ温泉

開湯:-
源泉温度:-
湧出量:-
PH値:-
泉質: 塩化物冷鉱泉
アクセス:船に乗れ!



御手洗のおちょろ船の具体的な運用方法や、当時の街の様子が『大崎下島御手洗における花街の景観と生活』というネットで拾った書き物に詳しく載っていた。興味のある人は調べてみたらいいかも。







捜査報告書:日帰り入浴700円也



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