2009年3月×日、長官より緊急指令が下りた

指令:浜島温泉のスナックで女を連れ出せ

早速、捜査官が伊勢へ向かった。
なお、以下のファイルはすべてノンフィクションであることに留意されたい


浜島温泉というのは、三重県にある温泉街だ。私も詳しいことは知らない。

ただ、この温泉街にはちょんの間(連れ出しスナック)があるということを以前から知っている。情報を仕入れたのはもう10年近く前になるだろうか。

当時若輩だった私は、鄙びた温泉街のちょんの間などには興味はなく、薄野や中洲といった 真っ当な繁華街に行って、真面目な風俗店で気持ちのいい射精をすることを夢見て生きていた。だからその資料は一度目を通しただけで本棚に押し込まれることになった。

そして、それから10年。真っ当でない風俗地帯にこそ興味を持つようになった今、浜島温泉にいって不真面目な施設で、気持のよくない射精をしたいと思った。


はたして、まだちょんの間は存在しているのだろうか。半年くらい前に、渡鹿野以外の伊勢湾近辺のタレこみ情報が来たことがあるが、浜島温泉のことを指しているのかよくわからなかった。情報主も「実際のところはよくわからない」と書いていたが。

今更ながら本棚に押し込んだ資料をじっくりとみたいと思ったのだが、残念ながら 詳細情報が書かれたその資料は、4年ほど前に部屋の下水があふれたときに水に濡らして駄目にしてしまった。今から思えばもったいない話である。浜島温泉で、確かストリップ 小屋を冷やかして、そのあとスナックで東南アジアの女を購入してセックスをしたという資料だったと記憶している。街は寂れており、ストリップ小屋もつぶれる寸前で、かろうじて不定期営業してるみたいな内容だった。

もう1つある資料は、ムック本にある情報だ。

もともと浜島は遠洋漁業の中継地として、漁師たちがくつろげる場所として発展した・・・
全盛期にはストリップ劇場が5軒もあったというから、その活気の凄さが伺い知れる・・・
スナックのホステスはほとんど東南アジア系・・・
料金は1時間2万円。泊まりが夜の10時からで4万円・・・
泊まるのは女の子の部屋となる・・・

初心者裏風俗入門 双葉社 より引用

と、書かれている。これは渡鹿野がまだ盛況だった時代に書かれたものだから、あまり有用な資料とは言えない。

期待しないでグーグル検索したが、まったくヒットしなかった。

まあ、とりあえず行ってみたらわかるだろう。

地図を見る。浜島温泉。陸の孤島か。近い様で遠い。

ルートを検討する。大阪から伊勢湾に抜けるには名阪国道を通って亀山から伊勢湾道路がセオリーだが、R25→県80→県81→R369→県429→R368→R42→県38→県46→R260というで山越えルートで浜島まで行くことにした。こっちの方が早いのではないか。

この峻嶮な紀伊山地を走破するために、本田技研のホーネットを手配する予定だったのだが、 どうしたことか手配が間に合わず、仕方がないので急きょ三菱自動車のKを手配して行くことにした。

 2mじゃなくて1.5mでしょ・・

 この道腐ってるよ・・

 落ちたら死ぬ・・

 180度のヘアピンが続く・・

えー、遠かったです。出発してから7時間かかって浜島温泉に到着。走行距離270キロなのに。地図にツーリングマップルをつかったのが間違いでした。お勧めロード&「野兎に会えるかも」とか呑気なコメントが書かれているが、限りなくダート。

本当は17時半くらいに現地入りの予定だったが、時刻はすでに19時。とっぷりと日が暮れている。真っ暗でなにも見えない。

 浜島は伊勢海老が有名らしいですね

GPSで位置を確認する。道路地図と資料の簡易地図を見比べて目標地点を確認する。ターゲットは近い。

半島の先っちょにあるみたいだ。

あたりは真っ暗で何も見えない。と、綺麗な建物が見えてきた。あった。浜島温泉のホテル群だ。防波堤に路駐して、徒歩で散策してみる。

真っ暗。懐中電灯が必要なくらいだ。でも星は奇麗だ。オリオン座がよく見える。遠くに廃墟のようなホテルがある。こわいな。だいぶ寂れているようだ。国道を歩く。防波堤の向こうは海があるのだろうが、暗すぎて何も見えない。スナックの建物が見えてきた。もう閉店してだいぶ年月が経っているようだ。







これは・・・、もう無いかな。

人は一切歩いていない。路地に入ってみることにした。廃屋発見。あった・・。これだ。ストリップ小屋の跡だ。

これが資料にあったストリップ通りか。完全に死んでるな。2軒あるけど、どっちもボロボロだ。もう閉店してだいぶ経つようだ。

 ストリップ小屋 「蘭」

 ストリップ小屋 名称不明


時刻をずらしてもう一度来ることにした。

時間つぶしにビン玉ロードとかいう道を歩く。観光ロードらしいが、暗くて何も見えん!





20時過ぎ。再びストリップ通りへ。


!!灯かりだ!


まさか!?ゴーストタウンと思った通りに、明かりが。しかし、ちょんの間と決まったわけではない。というか99%普通のスナックだろう。でもとりあえず行ってみよう。

前を1行過する。歩きながら横目でスナックを確認する。

扉は固く締まっており、半開きになっているわけでもなく、中からカラオケが聞こえるわけでもなく、赤い光が窓から漏れているわけでもない。

通り過ぎたとき、後ろで扉の開く音がした!


センサーでも付いているのか?恐る恐る後ろを振り返る。


スナックの扉が開き、60歳位の黒い服を着た婆がこちらを見ている。私は振り返り、1%の可能性を信じて、来た道を戻ろうとした。婆と目が合う。だが、婆は扉を閉めてしまった。 相手となるのは東南アジア人ということだから、ちょんの間であれば私は十分客になるはずだ。やはり普通のスナックのようだ。

それでも、なんとなく諦めがつかない私は、スナックの前で立ち止まって耳を澄ませてみたが、再び扉が開くことはなかった。センサーを探したが、どこに付いているのかわからなかった。

タイミングから、センサーが感知して扉が開いたとしか思えない。ということは、また、センサーが私の姿をとらえているはずだが。私は招かれざる客ということか。

もしかしてあの婆は魔法使いか。黒い服着てグリム童話に出てくる魔女みたいな顔してたからな。

ま、娯楽に飢えた皆様的には「お兄ちゃん、遊んで行かない?イヒヒっ」って言われた瞬間、捜査官がスナックに引きずり込まれ、魔女ババアに襲われる展開とかを期待しているんでしょうが。

東南アジアの女が歩いたりしていないか、そこらを歩いて回ったが、人がほとんどいなかった。

さよなら浜島温泉。かつての栄光はアコヤ貝の中に。



浜島温泉
開湯:1985年
源泉温度:40.6℃(気温26℃)
PH値 :8.03
泉質:ナトリウム−塩化物温泉(低張性・弱アルカリ性温泉)
アクセス:近鉄志摩線鵜方駅より宿浦行きバスで浜島停留所下車約20分。

ウィキペディア・温泉ナビより







捜査報告書:ご臨終です。合掌。



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