ザ・ソープランドの女


 鎌倉御殿。これはソープランドの名前。オレが2回目の入浴に選んだ店だ。雄琴デビュー戦の骸骨ユルマン口臭の女に、あそこは入り易い店だと聞いたので、その時から2回目は此処にしようと決めていた。

 先に説明したように、R161を京都方面から来ると、右折しなければソープ街に入れない。右折レーンなぞ無いので、ウインカーを出して中央線に寄せて車が途切れるまで待ってから曲がる必要がある。曲がる車はソープで遊ぶ車と100%バレるので、そんなことは若輩者の自分にはできない。だからそのままゲート前を通り過ぎて、200mほど行き過ぎる。そこでUターンして、さらに鎌倉御殿の手前のパチンコ屋の駐車場に入って、そこで呼吸を整えてから鎌倉前に車を付ける念の入れよう。今日はバイクではなく車だ。借りもんの日産サニーな。

 パチンコ屋の駐車場から出て車を歩道に寄せると、見栄晴みたいに頬肉の豊かなフロントボーイがウインドウ越しにセールスをかけてきた。

「今日は予算どれくらい?」

「いや、あんまりないけど」

「雄琴には2万から8万くらいの店があるんだけどね。うちは中級店でね。お金は3万5千円くらいなんだけど、今日は予算はどんな感じかな」

 見栄晴っぽい柔らかな感じのトークだ。

「えっと、予算はあんまりないんやけど」

「あんまりない? じゃあね。お兄ちゃん2万3千円は自分で出してよ。8千円はサービスするからさ」

 安くなっているのか高いのかよくわからんが、財布にある金額で足りるので大丈夫だ。それでいいと言うと、広々とした駐車場に誘導され車から降りるように言われた。

「そのままでいいから」

 車は勝手に停めてくれるようだ。自分はボーイに車を任せてそのままフロントまで行くという寸法だ。各車のナンバープレート部分にはラブホテルで見るようなプレート隠しの板が立てかけられている。なるほど、これがソープランドの正しいエスコートか。

 大きなソファが並んだ待合に通されると、お絞りとお茶が出てきた。そうだよな、やっぱり。こないだの店じゃこんなサービスなかったし。デビュー戦の青い鳥に対して愚痴を飛ばす。飛んでないと思うけど。

 ここで木屋町のヘルスのようにパネルでも出てくるのかと思ったが、それはなく、向こうで勝手に女をあてがってくれるらしい。すぐに案内となった。

「山紫が、ご案内致します!」

 掛け声とともに壁のカーテンが開かれ、その向こうに30歳を越えている女が立っていた。学芸会みたいだな。いっしゅん何が起こったのかと思ったよ。

 世の中の女の年齢は、10代・20代前半・20代後半の3つに分類される。その向こうは自分のこれまでの人生×ファジー2倍くらい遠いので、30歳以上は全てひとくくりに見えるし、自分にとっては32歳でも42歳でも52歳でも一緒だと思っている。 山紫さんはその4番目、すなわちオレの恋心のフェンスの向こう側に分類される年齢なので、何歳かはどうでもよかった。でも凄く綺麗で優しそうな顔で、スタイルも抜群にエロい。これからのプレイは大いに期待してよい物だと推測された。

 特に並んで歩かれるわけでもなく、おしっこは大丈夫か? などと聞かれながら広い赤いカーペット敷きの廊下を歩く。2階に上がると扉が並んでおり、そのうちの右側にある1つに入れられた。

 部屋の中は予想以上に広く、真ん中くらいにちょっとした仕切りがあり、中央部だけが通り抜け出来るようになっている。その仕切りでベッドルームと浴室に分かれているのだ。部屋は全体的に赤色で統一されており、薄暗い灯かりがいい雰囲気を出している。ベッドルームの真ん中にガラスのテーブルがあって、座ってと言われた。

 とりあえずトークタイムの様だ。話が合うか心配だったが、山紫さんは話し上手で、いや、たぶん本当はまったく咬み合ってないんだが、それでも楽しいと感じる。やっぱ中級以上の店は接客のスキルが違うんやな。

 オレが20歳になっていないと言うと、絶対嘘だと言って信じてくれない。一生懸命説明したが、たぶん信じてないな。まあいいや。

「私、洋服が好きでね、とくに秋が好きなの。いろいろ服を選べるでしょう」

 年齢の話が終わると、こんどは洋服の素晴らしさについてゆっくり語りはじめた。山紫さんは薄水色の肩パッドの入ったミニスーツを着ていて、いまどきクラブホステスでも着ないようなバブル景気全開のスーツ。さすがにこれは仕事着で、普段はこんな恰好で街に行ったりはしないと思うのだが、たぶんバブルの頃から働いているんだろな、となんとなく思った。

 適当に相槌を打っていたが、オレがあまり乗ってこないと解ったのか、センスねーなってのが顔に出ていたのか、またそれとなく話題が変えられた。

「ここは初めて?」

 ヘルスで良く聞くトークやな。ソープでも同んなじトークなんか。

「うん、今日は勉強しに来てん」

「そう、じゃあ今日はお姉ちゃんがいろいろ教えたるからな」

 超嬉しそうな顔をして言われる。オレは、お姉ちゃんがって、おばさんじゃないか。と思ったが、こんどは顔には出てなかったと思う。

 山紫さんはニヤニヤしながらこちらににじり寄ってきて、ふんふん鼻を鳴らしてエロい感じで身体を密着させながらオレの身体を触ってくる。そのまま股間に手が伸びてベルトが外され、靴下を脱がされ、気が付けばパンツ一丁。

 いつのまにか山紫さんも下着姿になっている。上下の揃った高価そうなレースの下着にストッキングがエロい。おお、4番目に分類される女もなかなかいいじゃないか。自然勃起したオレのチンコをトランクスの上から触りながら囁かれる。

「ねえん、今日なんかいイケるう〜?」

「・・・・・・」

 いや、そんなんチンコ次第やし。

 山紫さんはニヤニヤしながらそれ以上は聞いてこず、一杯しようねとか言って相当にニヤついている。

 セックス大好き淫乱女の演出なのか、それとも本当に若者とセックスしたがっているのか分析を試みたが、オレの大脳新皮質にある1%くらいしか使用されていない風俗データベースには過去こういったケースに該当する女がいなかったので答えは出なかった。

 お互いが全裸で浴室へ案内される。青い鳥とは打って変って清潔感のある広い浴室だ。壁には銀色の大きなマットが立てかけられている。ああ、はやくあれでヌルヌルしたい。尿道のスタート地点でスペルマがフライングしてるような、あの下腹から沸き起こるもどかしさ。なんせ1週間溜めてるからな。

 まずは椅子。ボディソープをもこもこさして体を洗いながら、ときおり中央の窪みから手が侵入して球袋やアナルへと指が這う。もうオレの竿はヘソに届くくらい立っている。その竿は放置されたまま、こちらの指を一本ずつマンコに入れるプレイが始まった。痛くないの? 素で聞いてしまう。ムードも何も有ったもんじゃないな。

「やさしくしてねぇ〜」

「・・・・・・」

 それが済むと、

「ねえ〜ん。入れて」

 不二子みたいな艶声で言われる。入れるって何を? と思ったが、チンコを入れるようだ。山紫さんはケツを突き出して椅子に座ったままのオレに乗っかる。最後まで入れずに、こちらを見ながら2往復させておわり。

 いったい何が行われているのかよく解らないのだが、これが中級以上のソープのプレイと言う事で動揺する心を納得させる。

 椅子が終わると湯船に誘われたが、ここでも入る前にピタッと止まり「ねえ〜ん、いれて」。入れてと言われてもどうしたらいいのか解らない。それに気付いている山紫さんは二ヤつきながらオレのチンコを持って入れてくるのだ。また2往復。こうして各プレイの前に、何気に5秒くらい生ハメさせてくれるのだ。

 そこから潜望鏡。湯船に浸かったオレの体はの水中でリフトアップされ、立ったチンコが水面から顔を出している。山紫さんはそれをパクっと咥えてくる。下から、温い・冷たい・温い、の感覚。湯につかっている体は温くて、水面から付き出てるところは当然冷たい。冷たいところで咥えられて口内温度で温くなる。素晴らしいプレイだ。いったい誰が開発したのか。

 それも終わるとオレは歯磨きを勧められ、そうしてるうちに手際よく洗面器でローションが練られ、銀色のマットがシャワーで温められる。

 指示どおりの場所にうつ伏せに寝ころんでスタート。背中を念入りに舐められ、足を絡まされ、とにかく凄い技の連続で、柔らかいのやらザラついたのやらヌルヌルしたのやら色々な感覚が体を包んで、何が何だか意味不明。快感で頭が真っ白になったころに右手を取られ、胴体の下にくぐらせたかと思うと、ちょいと引っ張られ、次の瞬間オレの身体はぐりんと180度回転してマットの上で仰向けになっていた。やっと挿入して貰えるのかと思ったら、仰向けでまた技が始まった。

 とりあえず挿入するまで絶対いったらダメだと思うので、我慢し続ける。やっとこチンコがマンコに格納された頃には、もう我慢しすぎで感覚がおかしくなっていて気持ち良くもなんともなかった。でも、ちゃんといった。

 山紫さんは、竿から取ったゴムを紙コップの中に放り込れて、「滑れないように気を付けて」を連呼して、オレの体を浴槽へと誘導した。ああ、やっぱりゴムは付いていたのか。いつ装着されたんだろう。

 湯船でローションを落としてからベッドルームに移って休んでいると、またセックスに誘われた。頑張って勃起を試みるも立たなかった。もうチンコの感覚がおかしくなっていた。マットが気持ち良すぎて、感覚が無くなったと正直に申告したら、

「そうなの〜!? ちょっと気合入れ過ぎちゃったわ〜。やっぱりセックスはベットでしなきゃね。ほんとごめんなさいね」

 と、しきりに残念がっていた。

 こんな綺麗なオバさんがセックスセックスって連呼していいのかと思った。そして、立たなかったのはオレの竿なのに、なぜ謝るのかが本当に不思議だった。

 残り時間で服を着て、だらだら話をする。立ったまま下着姿で鏡台に向かって髪の毛を溶かしている山紫さんの後姿がエロくて、また寝たいなあと思った。オレの中で第4の市場に分類されていた女が市場価値を持った瞬間だ。いや、オレがその第4市場の価値の高さに気付いたのか。これからはオーバー30の時代かもしない。

 そういえば殆どフェラが無かったなあ・・・と。やっぱりソープは口じゃ無くてマンコなんか。と妙に納得した。でもマンコの締まりはあまり良くなかったな。まあ、マンコをさほど知らないから、締まりがいいのか悪いのかもよくわからないのだが、たぶん良くないのだろう。オバさんだから19歳のピンサロ嬢とは違うのは当然なんだろうな。

 帰り際に名刺を渡された。渡してもいい? と聞かれて。受け取った名刺には『鎌倉商事 山紫』と印刷されていた。



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