山中越え


 佐山は、雄琴でソープランドを3店舗経営する栃憲に、京都から山中越で連れてこられる。リンカーンコンチネンタルF4で。 なぜに京都からというと、東京から新幹線に乗ったら、雄琴の最寄りの新幹線停車駅は京都になるからだ。京都より格下の滋賀県には、こだま号しか止まらない。 頑張って栗東駅を作ろうとしていたが、県知事が建設計画を凍結した。こないだの衆議院選の時に小沢一郎に騙されて火だるまになった知事だ。

 もっとも栗東駅があったところで雄琴の街は湖西に位置するので、琵琶湖を横断しなければならないのだが。

 京都から滋賀へ行くには国道1号線を東京方面へ下るか、山中越えをする。北白川から比叡山の麓へ抜ける峠道だ。地元民以外は殆ど使わない。

 京都人や滋賀県民であれば、解り切った話だが、図面を載せてみる。赤い道が国道1号で、青い道が山中越えのルートだ。 こういうマイクルクライトンみたいな、活字の常識をブチ破る書き方が簡単に出来るのがネットのいいところ。



 佐山がリンカーンで山中越えをしたのは12月。私も何年振りかでインプレッサを出動させて山中越で雄琴へ行くことにした。12月ではなく、暑い夏の日に。

 北白川の天下一品総本店から500mくらい下がった向かい側の「山中越」の標識がある道。急カーブが連続する、リンカーンなんぞで走ることが出来るんかという道だ。 大型車はバスもトラックも喘ぎながら登っている。今も昔もなにも変わっていない。スバルインプレッサはさすがに峠仕様だけあって、 何の苦もなく坂道を登っていき、峠のてっぺんへ。

 確かこの坂を越えれば琵琶湖が見える。



 見えた。

 この山を越えると滋賀県だ。花村満月が京都人かは知らないが、たぶん違うだろう。読めばわかる。あれは京都人以外が書いた京滋の情景だ。 まァ、だからこそ大津京ってのをわざわざ出したんかもしれない。都に対する対抗心として。

 あんまり天気がいいので、コンビニで買ったビターな珈琲を取り出して、景色が良く見えるところで座り込み、10年以上前を振り返ってみた。



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