ネオン街にすべてを賭けて
ふと、我に返った。
青い缶に入ったビターな珈琲はもう無くなっていた。
雄琴へ行かなくなってだいぶ経つ。もう随分前の思い出だ。
山と山の間に、琵琶湖が見える。橋があってビルがあって、良くできたジオラマみたいだ。
ネオン街の頂点とは一体どこにあるのか。
下っ端が主任になって、マネージャーになって、その上には店長、
序列を付けたがるところには、さらに上に代表やら支配人やら。
多店舗の場合はその上に本部の部長みたいなのがいることが多い。
店の経営者は別にいる。その経営者の上には実質的に経営権を持つ経営者がいる。
その上、または横軸には金を出す金主がいる。
もちろんやり方は幾通りもあるのですべてこの通りではないが、
多かれ大体こういう仕組みになっている。
これらのピラミッド構造は、普通は大して長く持たない。
なにかのきっかけであっというまに崩壊する。
三角錐を構成していた一つ一つの石ころの手元には何も残らない。
外からの見た目は変わらずネオン煌く城のままであっても。
残るのは自分の魂をすり減らして深く刻まれた人生。
その隙間に幾重にも折り重なって干渉してくる様々な想いを持った他人の魂。
それが傷なのか勲章なのか何なのかは人それぞれ。
少なくとも私はそんな風に思っている。
黒服は20歳でも能力さえあれば50万とか100万とか給料もらえるんだから、夢はあるんじゃないかと思う。
私はソープで身体を売ったことは無いのでそこで働く女に夢があるかは解らない。
客として行くぶんには――言うまでもないだろう。
それらが三位一体となった時に城が建つんだと思う。
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