習熟


 雄琴デビューから随分経ち、ソープ独自の仕来りもある程度理解してきた。高級店に行けばまた違ったサービス・作法なのかもしれないが、オレの財政事情では3万円以上の店に行くのは厳しい。それに風俗情報誌などを見る限り、大衆店や中級店とプレイ時間以外はさほど違いがあるようにも思えず、高級店には食指が動かない。

 そもそも風俗遊びは、自分の求めているプレイに合致するかであり、そこに金額の多寡はあまり影響していないようにも思える。オレの、「100%確実なセックスがしたい」という要望を叶えるためには、ソープに行きさえすれば十分であり、そこに同じ年くらいの可愛い女とセックスしたいという追加希望は無い。どころか5歳以上は必須で年上であり、フェラではなくセックスの技量が高い女でなければいけないのがオレの希望で、こうなると尚更ソープランドでありさえすればOKということになってしまうのだ。

 ただ、ヘルスと比べて年齢層が高すぎる故にまったく女と話が合わないのがネックだ。だからソープ嬢をコマすという当初の狙いは、とうの昔にどうでもよくなっている。セックステクニック&お姉さん。これですよ。これがオレにとっての雄琴ソープ。モンスターさえいなけりゃ言う事無いんだがな。

 なんだかんだと一丁前にソープ中級を気取ってみたりするこの頃。オレの雄琴遊びもそろそろ様になってきたんじゃないか。そして、凄いテクニックを知ってしまったという優越感。ふっふー。三条大橋でナンパしているやつらにはわからんぞな。

 若いうちにお姉さんに可愛がってもらう遊びをしないと、一生出来ないままになる。おっさんになって年上の女に甘えるセックスなんかしてもキモいだけだからな。おっさんになってからでは、もうどうしようもない。取り返しのつかないことになる。オレはこれに早く気付いて良かった。

 さて、今日の入浴は <六本木> だ。シルクロードゲートから入って、何時もの如く適当に客引きをあしらって、なんとなく辿り着いた店。ネオン看板には「YOUNG六本木」と書かれている。いままでは東京の地名という理由で敬遠してたんだが。入店交渉で確認した料金は意外と安かった。というか、かなり安い方だと思う。

 他に客のいない待合室に通される。黒い革張りのソファに座っていると直ぐに案内となった。雄琴標準を絵に描いた様な、白シャツ&ベスト&蝶タイのボーイに案内される。

 今日の自由恋愛の相手は、私服? と思わせるカジュアルな服を着た女。推定30代の中〜後半。髪型は前側をバッチリ整えてしまったウルフカットでも言うのか、特徴的だ。それを赤茶色に染めている。妙に落ち着いてるなあ。というのが第一印象。

 プレイは、小一時間でマットプレイをして一発抜くというもの。アシストで脱衣して、きっちり椅子、潜望鏡、歯磨きをしてから銀色のマットが敷かれた。短い時間ではこれだけでもきっちりやれば大したサービスなのに、そこからマットとか申し訳ない気分になる。

 うつ伏せから入って、途中でひっくり返され仰向けへ。フルサービスとまではいかないが、それでも入念に滑ってくれ、高まってきたら何気無くゴムが付けられ騎乗で挿入。パンパンと肉を打つ軽快な音とニチャニチャという卑猥な音が共鳴する中、オレの中で徐々に込み上がってくる快感が頂点になり、それを察した女が動きを速めた時に、我慢できずに発射した。

 ゴムが外され、マットに寝そべったままシャワーで洗ってもらう。全身にまだ余韻の残る中、微かに揺れるマットと、およそ38度のシャワーの水流。ぼんやりする頭に、寝てていいからねという女の声が聞こえてくる。なんて気持ちいいんだろう。この世にこんな気持ちのいいものがあっていいのか。しかも、これの料金がたった16,000円なんて――。

 女の時間配分は完璧で、浴室からベッドルームに移った時点で少しのトーク時間が残されていた。タオルを腰に巻いてもらい、お茶を飲みながら話をする。

「今日はどうしてこの店に来たの? 初めて?」

「べつに、なんとなく。直ぐ行けるって言われたし」

「そう、とけい台とか人魚の城は流行ってるもんね。来るとき止められなかった?」

「うん」

 とけい台にはこないだ行った。フロントの特攻ボーイと口論したにも関わらず、そろそろほとぼりが冷めたとか勝手に思って。相変わらずスポーツ刈りの男に「待ち時間はない!イチゴーゴ!」と言われて入ったら1時間以上待たされた。今日は、タイミング良く前の車のすぐ後ろに続いて入ったから、オレの車は特攻されなかった。物量作戦だな。

「あそこは凄いもんね。あたしも昔いたのよ。今はもっと忙しくなったみたいで、ごはんを食べる暇もないって。あたしは忙しすぎるのは無理でね、ここが一番合ってるわ。この店は、元とけい台の女の子も多いのよ」

 確かにとけい台で出てきた女は雄琴にしたら若くて可愛かったが、さっぱりし過ぎてて、あんまり面白くなかった。全体的に女も客もボーイも殺気立っててオレ向きじゃなかった。ということは、オレもとけい台より六本木向きの客なんかな。女が少しだけ笑って続ける。

「ほんと、し過ぎるとあそこが擦りきれちゃうよね。ヒリヒリしちゃう」

「うん」

「お兄さんはよく雄琴来るの? いろんな店行ってそうね」

「うん、そう、一回行った店は行かないね。一回寝た女とも寝ない」

 だらだらと話をしていたら時間になった。

 店もボーイもテクニックもマンコもけっして悪いわけではない。しかし飛び抜けた事項があるわけでもない。しいて挙げるなれば、コンドルやタコのような抜群の安定感というか、何の心配もいらない、そういうものを感じた入浴だった。あとで雑誌を見たら、この女が顔出しで載っていた。よくみたら毎号載ってる女じゃないか。ナンバーなのかな。妙に貫禄があったからな。どっちにしてもベテラン選手だよな。

 日本各地のナンバーの女とセックスしたら楽しいんじゃないか。ぼんやりとそんなことを考えた。そもそも歌舞伎町と中洲と薄野以外にソープランドはあるのか。日本にソープランドはどれくらいあるんだろう。

 叶うなら中洲へ、薄野へ行ってみたい。日本一といわれる名古屋のヘルスにも行ってみたい。そこで一番美しい女とセックスがしたい。マンコを舐めたい。




つづき 戻る