根性焼きの女


 令女プールって何なのか。全国にあるようだけど。そういえばタレントクラブって店も全国にあるよな。英国屋も。それから令女プールとニュー令女の違いはなんなのか。

 このような風俗店舗における名称の分布と変遷、みたいな学術論文を書く人がいてもいいと思うのだが、やはり興味のない人が多すぎて、いや、興味ないのではなく学術論文にならないと思っているんだろうな。学術とはこうで、論文はこうで、みたいな。セックスもこうで。こうあるべきで、みたいな。下らんね。

 鎌倉御殿でのスペシャルなプレイ並びに令女プールでの正しい疑似恋愛の一時、プラスおまけのコリコリマンコはオレの脳裏に焼き付いて離れず、その他大勢のモンスター達との死闘を差し引いてもまだ雄琴には65点くらいの評価がある。そもそも40店舗あるうちのまだ半分どころか3分の1も行ってないんだから。

 木屋町のヘルスでは若くて可愛い女が出てくるし、女と簡単に仲良くなれたりもする。が、いかんせん良くも悪くも「凄い体験」に欠ける部分がある。比して雄琴であるが、これは料金は決して安くない。だが「凄い体験」への期待感は、もう青天井にあるのだ。とくに女と対面するときのドキドキ感は、毎回毎回がロシアンルーレットで遊ぶような嫌な意味で高揚した気分になれる。まあ、そういったことを考慮した結果、資金が調達されると「雄琴:1=木屋町:2」くらいの割り振りでリフレッシュに行くことになるのである。

 今日は福沢諭吉2名と新渡戸稲造1名の資金が調達され、雄琴へ入浴に行ってみることにした。繁忙期は避けるべきとの教訓の元、店が暇であろう給料日前の平日の昼間を狙って。

 ゴールデンゲートをくぐり、奥の方にある店へ向かう。こじんまりとした造りの店だ。

 店前に車を止めて、フロントは可もなく不可もなくな対応。さほど待たずに案内。今日の相手はそこそこ若い、茶髪のロン毛の目が離れ気味の細身の女。会った瞬間から、さっぱりした性格と言うか、とりあえずオレの好みではない感じ。体のラインはイイ感じなんだがな。

 部屋に入るとセルフで脱衣する。脱いだ女の体はやっぱり細く、雄琴クオリティではいい方だと思う。だが、問題はプレイだ。

 セミアシストで服を脱ぎながら、音楽は聞くのか、とかそういう話を振ってこられる。ああ、話のネタ無くなったら音楽とか趣味の話になるんかな。って思った。そう思えるとわざわざ話をするのがダルくなってきた。早くチンチン入れさせろ。

「あたしチューブの前田の歌が好きなの」

 あーそうかい。

「CD新しいの出てるんだけど、買うお金がないからまだ買ってないの」

 CDってさ、3000円だろ? そんでおまえソープ嬢だろ?

「今日はこれで買えるよ」

 あ、オレの払うサービス料で買うってことね。客のオレは夢もロマンもないね。

 椅子は超軽めで、入浴はセルフ。手を抜くと言うよりは、これがこの女の基本形なんだろう。どうすれば客が喜ぶとかあんまり何も考えないタイプなんだろうなあ。

 オレもオレで粋ってマットを省いてベッドのみを主張。

 女はベッドプレイに入る前にヘアゴムで髪の毛を後ろに束ねて、股間に顔を入れてきた。あーあ、オレ、長いまっすぐの髪が乳首の上をサワサワするのが好きなんだけどなあ。もうちょい空気読めよ。

 そうして、ソープ嬢にしては上手と思われるフェラの後にゴムが付いて騎乗で入れられる。

 ピストンピストン。

 興奮の要素が少なくてなかなかスタンバイしない。

「正常位になってみる?」

 ああ、疲れたんだね。スクワットだからね。交代しますよ。

「あたし下付きだから正常位は入れにくいかも」

 上付き、下付き、なんやそれ。聞いたことあるけど、どういうのかわからない。解らないが、上級を装おうとして解ったふりをして苦戦していると萎えた。なんとか無理やりに挿入したが、5回くらいピストンしたらポロっとマンコから零れ落ちた。

 女はすぐにそれを察して、フェラしてもらって勃起すると騎乗位。ここで空気読んでくれなかったらオレは撃沈してたぜ。

 ピストンピストン。

 機械的なピストン運動が展開される下で、じっと目を瞑って、擦れる女の粘膜の感触をコンドーム越しの亀頭に感じながら高まってきて自然に発射した。

 女はオレがいったのを察してピストン運動を停止させた。

「上の方がイキやすいの?」

 チューブの前田に負けるのかと思うとイカないね。あいつが旬なのは夏だけなんだし。心の中で強がったが、下付きマンコに正常位で苦戦したのが本当のところだ。

 だらだらと話をする。女はちゃぶ台の前で全裸で立て膝でタバコを吸い始めた。正しい売春婦の見本を見ているようだ。

 ふと気付いたんだが、タバコを持つ女の左手の親指の付け根あたりに根性焼きの跡が3つ。

 ああ、搾取されてるんか。

 CD買う金もねーよな。きっと今日の稼ぎは冷蔵庫の上にある箱の中に入れておくシステムとかになってるんだろう。箱の中のお金が減ってきたら焼鳥屋のタレみたいに継ぎ足し継ぎ足し諭吉が追加されて、場合によっては「おい、今日夕方からスロット打ちに行きたいから沢山めに入れといてくれ」。みたいな。で、うっかり箱が空にでもなったら根性焼きされる。みたいな。

 そんなら別れりゃいいじゃん、なんで付き合うのさって思うのは一般人で、これがもうヒモの付いたアコヤ貝になってるから別れられないんだよなあ。じゃなきゃお前さんが付き合ってやりなよ。え? ありえない? じゃあ黙ってな。

 竿師ってセックスのテクニックじゃ無くて心の問題なんかなって、いや、そもそもセックス自体がテクニックじゃないんじゃないか、いや、心の問題を解決するのがテクニックなんか、今日のセックスは客観的に観ればセックスだがプレイのセックスであって心のセックスじゃないのかもしれない・・・・・・きっとオレの脳内データベースが50%の容量を越えたときに解るんだろうな・・・・・・とか難しいことを考えながら退室時間を迎え、ゴールデンゲートを後にした。

 帰り路。右手側にホールが見えてくる。京都へ帰るにはまっすぐ行かねばならんのだが、ここでハンドルを右に切らずに素通りするには至難の技で。だって楽しかった風呂上がりに打つと出るんだよね。あげまんって本当に有るんだろう。

 上付き、下付きは正しく解らなくても、上げまん、下げまんは良くわかる。なんせオレはギャンブルするダメ男だからな。ソープ行って一発した後にパチンコに行く。正しいダメ男の見本。みたいな。

 で、今日の入浴は大して楽しくもなかったわけだが、なぜか夢遊病者のようにハンドルは右に切られ、田舎のホール特有の広い平面駐車場に車を止めて、気が付けば自動ドアを抜けてジャンバリうるさい店内に入っていた。

 さて時間も時間。短時間で大勝負できるのはスロットじゃ無くてパチンコ。目立つ所に海物語3があって、その隣島に6もある。3の方が人気はあるのだが、あの波の荒さは危険。だから306分の1で賞球5&15の9カウントの15ラウンドでまったり行こう。

 そもそも確率変動絵柄が10回続く確率は2の10乗分の1、すなわち初当りの1024分の1だが、これが普通に起こるのだから確率もへったくれもない。だからモンスターハウス嫌いなんだよ。バカラもな。k線とか記録しても完全確率だったら意味ねーだろ。意味ね―クセに気になって張り替えたら逆目に出るってな。

 だからジグマじゃ無い時は結局は運。神がかり的に勝つときは神がかり的な運に依る。スロットは設定があってパチンコは釘があって、主にそこに技術介入の余地があるから、試行回数が増えると運ではないといえば無いのだが、なんしか上げマンはそれら確率論を一瞬にして葬るインパクトを持っているのだ。嘘じゃないぜ。

 さて。ドル箱×1で6000円だから5箱も積めば風呂代が返ってくるという計算だ。ハンドルを回すと銀色の玉が弾かれて飛び出し、勢いよくガラス盤にあたりカチカチ鳴り始める。こんな堅い鋼玉を当てられたら痛そうだが、当たったら痛いどころか楽しくてたまらないのがパチンコ。バスケットボールやサッカーよりはるかに楽しく安全な球技と言えよう。やりすぎると腰や尻が痛くなるところもスポーツっぽくていい。

 カチカチカチカチ。

 気が付けば閉店時間。確率変動どころか数百回は回った液晶が揃う事は唯の1度もなく財布が空になった。やっぱりというか負けた。いっぱい。もっと高いソープにもう1軒行けた。これが下げマンなんだよ。わかったか。




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