奉仕するバケモノ女とバケモノ使いと客のオレ


 鎌倉御殿3連戦から暫くの後。今日こそはゲートをくぐるのだと意気込んでやってきた。季節はすっかり冬の始まりで、ばっちりレザーを着こんでいても単車に乗ると全身が芯から冷え冷えになる。

 単車で来たのはいいが、ゲートの中に入るのがちょっと怖いので、いつものようにパチンコ屋のガレージに入り、そのまま駐車してパチ屋のトイレでションベン。それからヘルメットでぺったんこになった髪の毛を水で解して、モンダミンでぶくぶくをしたら準備完了。気合を入れ直すと、徒歩でゲート内を偵察することにした。

 シルクロードゲートから様子をうかがっていると、直ぐに近くにいた客引きに捕まった。 どうやら徒歩で様子を伺うという行為は、まこと鴨葱だったようだ。客引きにとりあえず店内に入れと言われるが、料金が心配なので、そこだけはと確認する。

 ところが。価格を聞くと財布にある金額で十分どころか、青い鳥よりも鎌倉御殿よりもだいぶん安い。客引きの店には <タレントクラブ> とカタカナで書かれた大きな看板が出ている。若者向けの名前じゃないか。これはいいんじゃないですか。遂にあたりを引いたか? 雄琴初の20代の女とのセックスかとニヤニヤ笑いが込み上げてきた。ここでオレの身柄は店内に引き渡される。

 誰も客がいない薄暗い店内で、待合室のようなところに通された。ここにも客の姿は見えない。暫くするとボーイがやってきた。黒いベストを着た天然パーマの年配の男。プレイの前に会員カードを作るように言われる。「お名前は?」と聞かれたので、「もるだ」と答える。

 ボーイは、「もるだ様ですね。解りました」と言って一旦下がって、今度は赤い小さなカードを手にして戻ってきた。カードには「毛留田」と書かれていた。だいぶ恥ずかしかった。杉原にしとけばよかった。

 さて、敏腕ボーイにすっかり茶化されてしまったオレは、赤くなった顔で女の待つ部屋へ案内された。鎌倉御殿のように盛り上げる演出はなく、ボーイの先導でプレイルームのドアが無造作に開けられた。空いたドアの先にはフランケンシュタインがいた。

 フィーバーゴースト11番絵柄だ。ここはモンスターハウスだったのだ。

 赤い顔を青くしながらも、なんとか平静を装い、心を落ち着かせる。なんでこの女はこんなに不細工なのだろう。タレントクラブなんて洒落た若者向けの名前の店なのに。

 オレが憮然とした表情でいると、フランケンが気を使ってか話しかけてきた。キャラ設定どおりにおっとりしたタイプの女のようで、言葉を選びながら話しかけてくる。モルダーは何処から来たの? いまいくつ? ここは初めて?

 モルダーモルダーってオレの事を知ってるんか? もしかして知り合いか? ますます心が動揺してきた。いやきっと本家のXファイルのデビットドゥコヴニーのファンなんだろう。そうに違いない。

 しばらく話をして、どうやら女が知り合いではないと解ったので、ようやく周りを見回す余裕が出てきた。しかし、雄琴に来る度いつも余裕が無くてテンパるシーンがあるな・・・・・・。部屋は高級感も妖艶感も無く、ワンルームマンションみたいな殺風景な空間だ。鎌倉御殿との格差が凄い。これが噂のモンスターマンションか。

「じゃあ、脱ぎましょうか」

 フランケンがプレイに誘ってきた。

 オレは勉強の意味も込めてプレイの主導権を握ろうとして、マットはいいからと、ベッドだけ1回戦を主張する。この発言にフランケンはちょっと残念そうな感じの顔をしたようにも見えたが、たぶん気のせいだろう。ネジが刺さって常に残念な顔してるしな。

 ベッドに仰向けに寝転がり、とりあえず全て任せてみる。なんだかヘルスみたいな感じ。フランケンはオレの上に体重をかけないように覆いかぶさり、大きなベロで体中をべろべろ舐めまわしはじめた。首筋、耳、乳首、胸、ギャランドゥ、太もも、膝、もう全身。手の指も足の指も一本づつ舐めてくる。これで唾液が臭かったら死亡遊戯だが、幸いなことに無臭だった。

 チンチンまで達した舌が再び乳首まで戻ってきて、また下がって、今度はチンコをスル―して太ももまでいって・・・・・・。

 ヤツはいったい何時までオレを舐めるんだろう。これはこちらも多少は奉仕をしなければいけないのではないか――なんて変な気が起こり、オレもクンニ王子の名にかけてマンコを舐めることにした。

 交代の合図を出し、とりあえず乳首を舐める。堅めの乳首は塩味がした。そしてすぐに下の方を確認する。濡れている。ごつい太股の中心地点にある、汁が垂れかかっているビラビラを下の方から掬い上げるように舐めると、うっとなるくらい強烈に酸っぱかった。

 舐めてもフランケンの反応がイマイチ。クンニ王子の経験上、これだけ濡れてると良い反応を示すはずなのだが。イマイチなのでゴムを付けてもらい正常位で入れることにした。仰向けに寝たフランケンの股の間に割って入り、自分の竿を自分の右手で持って穴に狙いを定める。狙った所に亀頭が当たると、えいっと腰を突き出した。微かな圧迫感と温度の変化。上手く入ったようだ。あとはフランケンの巨大な太ももを抱えてぎこちなく腰を振る。彼の脛の剃り跡がちくちく当たって痛かった。ちゃんとメンテナンスしろよって思ったが、もともと剛毛なんかもしれんな。

 5分くらいでゴムの中に発射した。フランケンは無表情のままだ。もしかしたら未だ性感体が付けられていないのかもしれない。

 事が終るとトークタイム。彼は京都の出身で、京都から通っていると言っていた。フランケンらしく悪い性格ではないのだが、いかんせん不細工で身体がガッシリしすぎているのだ。顔も四角いし。感度も悪いし。

 全てが終わって部屋から送り出されると、また待合室みたいなところへ連れてこられた。さっきまで隣にいたフランケンは姿を消しており、代わりにスポーツ刈りのボーイが相手となった。

 座り心地の悪い黒色のソファに座らされる。斜め前にボーイが片膝になり、これからヒーローインタビューが始まるようだ。

「本日は、いかがだったでしたでしょうか?」

 それを言うなら「いかがでしたか?」だろと心の中で言い返し、「あ、まあままでした」と口で返す。

「何回されましたか?」

「1回」

「1回ですか? 何回いきましたか?」

 おまえは1回しかセックスしてないのに2回以上いくことが出来るのか?

「いったのはマットですか? ベッドですか?」

「ベッドで」

 メモをとってるわけでもなく、機械的に聞いてくる。憶えてるんかこいつ?

「1回だけだったんですか?」

「こっちから1回でいいって言ったから」

「それはどうしてですか?」

 あー、うぜー。

「女の子さんのサービスはどうでしたか?」

「まあまあです」

「点数をつけると何点くらい貰えますか?」

「60点」

「60点、どのあたりが良くてどのあたりが悪かったですか?」

「サービスは普通でしたけど、愛想は良かったです」

「女の子さんと、どのような話をされましたか?」

「京都の話とか」

「話は盛り上がりましたか?」

「あんまり盛り上がってない」

「どのへんがまずかったでしょうか?」

「いや、まあ、いろいろ」

「教えてもらえませんか?」

「いや、まあ、全体的にあんまり面白くなかった」

「ああ、ではとにかく面白くなかったという事で」

 バカなのかお前は。いかにもソープの黒服って感じの出来の悪そうなボーイ。皺だらけのスラックスをダボっと穿いて、これまたサイズの大きすぎる白シャツに蝶ネクタイを緩めに付けている。ヤンキーかよ。で、その白い靴下やめろよ。ミドリ電気かよ。きっと外に行くときは革靴じゃ無くて運動靴なんだろうな。スーツに運動靴。しかもマジックテープとか。なんなんあれ。ピンサロにも良くいるけど。格安店ボーイの法則か? それから頭洗えよ。フケ出てるじゃねーか。

 心の中でしか言えないオレはチンカス野郎。この拷問インタビューは、たっぷり5分は続いた。

 早く止めたいんだが、中途半端にドル箱に残った1回分の出玉を消化しなければ帰ることが出来ないと言う状態。当たる訳もなく、ボーダー10くらいのクソみたいな釘。でも席を立つことが出来ない。そうしてるうちに隣に脂ぎったリーマンが座って確変絵柄でお座り一発。鬼の首でも取ったかのような顔でタバコに火を付け、煙をぷうーっとこちらに向かって吹き出してくる。これが正しくモンスターハウス。ああ――。

 そのあと、どうやってゲートの外まで出てきたのか憶えてない。

 こんなアホっぽい奴にオレは舐められている。次は絶対ビビらずに奥にあるであろう本当の優良店を目指そうと思ったのだった。



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