彼女と出会ったのは日本で2番目に大きい都市の繁華街。ニューハーフ専門店で出会った。ニューハーフと一口にいっても、竿や球を取ってしまい、顔だけでなく体も完全な女に近い者もいる。彼女には球も竿も付いていた。ホルモンも打ってないようだった。だから、女は裸になってナンボだと思っていた僕は全く興奮せず、楽しいと思う間もなく時間がきて終わった。でも、目鼻たちやスタイルはよく、髪も茶金髪で長く、服を着ていれば見た目は女に見えた。


その店には一度しか行かなかったが、彼女との関係はその後も続いた。毎朝おはようメール、夕方にお疲れメール、夜はお休みメール。といった具合にメールが毎日届くようになったのだ。

はじめのうちは適当にかわしていたが、あんまりしつこかったので、デートしてみることにした。別に彼女の事が好きだったわけではないが、業界の女と夜の繁華街で遊ぶのは嫌いではなかった。デート代は女が出してくれるし、一生懸命デートプランを考えなくても、そこらの店で飯を食ったり買い物したりするだけで満足してくれる。

夜の12時に待ち合わせをして、その日は、カラオケに行く事になった。深夜2時くらいには歌い疲れて出てきたが、こうなれば朝まで一緒にいなればならない。そして朝まで一緒にいれば当然セックスしなければならない。僕は内心、どうやってセックスせずに今夜を乗り切ろうかと考えていた。

彼女は「内緒だよ」と言って、僕を閉店後の店へと入れてくれた。二人で店泊した。狭いベッドの上で、二人で並んで寝た。彼女はセックスしたかったみたいだが、肝心の穴が無い女と違う穴でセックスする気にはならなかった。


狸寝入りをしたらあきらめてくれた。
たぶんバレてたと思うけど。


それから数カ月がたった。ある日、彼女は僕に言った。

「ねえ、あたし、次にデートする時はメンズの格好でもいい?」

彼女の言っていることがよくわからなかった。次に会った時、彼女はジーンズにロンTで現れた。髪の毛も短くなっていた。彼女は、いや、彼はニューハーフではなく、ゲイだった。店は辞めたという。


あたしはゲイなの。男として男が好きなの。ここに来たのも、好きな男を追いかけてきたの。でも、その男は他の女と付き合ってたの。それであたし、女になって・・・・。こんなあたしのこと、嫌いになった?


別に恋愛感情があったわけでもなく、相変わらず体の関係もなかったが、多少複雑な心境だった。そして、「そろそろお別れかな」と思った。

最後に、二人でカラオケへ行った。案の定というか、カラオケボックスで襲われた。興奮しなかったし、立たなかった。嫌悪感だけが残った。ニューハーフだったら勃ったかな。苦笑した。

勃たなかったけど、彼は満足そうだった。途中で店員のお姉さんがウーロン茶をもって入ってきたが、下半身をさらけ出している僕に対しては特に何も言わなかった。


それから暫くして、彼は3番目に大きい都市の繁華街へ移って行った。


その後も、数年にわたって付き合いがあった。いつも、忘れた頃に電話がかかってくるのだ。

彼は3番目に大きい都市の繁華街のど真ん中で自分の店を出していた。店には2回、行ったことがある。行けばプレゼントといって、ブランド物を貰ったりもした。どうしてもと言われ、デートしたこともあった。デパートへ行って、なんでも買ってあげるといわれたが、別に彼からプレゼントして欲しいものはなかったので何も言わなかった。

もう、連絡は無い。こちらから連絡することもない。

僕は、彼の人生を別に変っていると思っていない。そして、彼の人生に少し干渉し、干渉された自分の人生も。そんなもの、繁華街では明日には忘れ去られる、誰の傍にもある人生なのだ。



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