特別寄稿

渡鹿野島2012

文-けいす




2012年5月某日

そうだ 渡鹿野、行こう。或る日突然無性に行きたくなったので、近鉄特急に飛び乗った。

17時30分頃に上陸した。因みに、私はバスで渡鹿野渡船場に行った。バスには私と同じ目的で乗車していることが明白であるおっさん1人と中年の夫婦1組が乗っていた。案の定、おっさんは渡鹿野渡船場で降りた。夫婦はここでは降りなかった。

渡船場に行くと、コンパニオン風の女5名(3名はチャイナドレスを着用していた)が船を待っている。おっさんと私と5人のコンパニオンとで船に乗り、島に向かう。チャイナドレスの3人はギャルであり、興味はなかったが、残りの2名は熟女であり、容貌も悪くはないので、これが買えるのかと興奮する。併し、何となく彼女達はただの宴会コンパニオンであり、私が買おうとしている商品ではないような気がした。

島に到着すると、コンパニオン5名は真っ直ぐ大きな旅館に入っていった。

島の案内地図の前で、やり手ばばあと思われるばばあと前便で着いたと思われる2名の若者とが話している。近付くと、私もばばあに声を掛けられた。おっさんも合流した。若者2名とおっさんはショートだということで、もう1人のやり手ばばあに連れられて、右側の道を上がっていった。

私1人は、ばばあに左側の道を上がっていった一軒家に案内された。歩きながら、ばばあは「タイ人の子でも良いよな、日本人の子は皆宴会でな」と私に言う。向かった先が旅館ではなく、一軒家であることからすると、女は選択できないような雰囲気である。

ばばあに一室に通される。至って普通の民家である。誰も居ない。

ばばあは携帯で女に連絡を取り、女は今から鳥羽を出発するので、あと1時間くらいで到着すると言う。TVを見ながら、ゆっくりするように言われた。

ばばあと世間話をする。愛想の良いばばあだ。ばばあによれば、現在この島には女の子は19人しか居ないという。「女の子」の定義は、「この島に在住し、体を売る女」で正しいのであろうか。細かいことを確認するのも野暮なので、ばばあには聞かなかったが、そうであるなら、今から鳥羽から来るという女は、この定義には入らないこととなる。後にその女自身から聞いたが、女は鳥羽に住んでおり、GW中アルバイトとして島に通っているということなので、19人には入らないのであろう。

ばばあは女が到着したら、また来ると言って、去り際に、「明日本土の病院に行くのだが(尿石を取るためである由)、7:45に鵜方駅行きのタクシーを予約しているから、一緒に乗せていってあげる」と私を誘う。明朝は島を探索する計画であったのだが、ばばあの誘いを断る訳にはいかない。「起きられたら、一緒に乗せて欲しい」と答えた。この時点で女と何時まで何回するか未知であったから。私の思惑を察してか、ばばあは「どうせ女の子は8時までだよ」と釘を刺す。

その後、HemingwayのThe Sun Also Risesを読みながら、女が来るのを待った。

19時が過ぎて、ばばあが2人の女を連れてきた。両者共にタイ人で、40代であろう。クオリティー的にどちらも大差はない。後は好みの問題であろう。ばばあが私にあてがったのは、私好みの容貌の方であったから良かった。

夜はここでするのではなく、別の場所に移動すると女に教えられる。22時30分に移動するので、それまで2階の部屋を使うように言われ、私はそこに荷物を置きに行った。

ばばあは夕食が取れるお店に案内してくれると言う。女も来てくれるかと思ったが、女は時間までこの家に居るようだ。

ばばあは私を近所の居酒屋に案内し、22時30分までゆっくり過ごすように言って、港の方に去っていった。

居酒屋に入ると、男の客が1名カウンターに座っている。石川県から来たとのことだ。私と同じばばあにタイ人の女をあてがわれ、同じようにこの居酒屋に案内されたと言う。尚、旅館を取って、午前中に上陸したが、その旅館は健全な旅館であり、女の話を持ち出すと、不振な目で見られたらしい。この人は、午前中からどのように過ごしてきたのであろうか。

この島に生まれ育ったという居酒屋の店主によると、30年くらい前が絶頂期で、島民500人中200人は売春婦であったという。併し、現在は衰退を辿る一方で、ばばあの言う通り、19人くらいしか居ないらしい。石川の男は、「こういう場所は残しておくべきだ。今晩は長いな」と言って去っていった。

私は、何を注文すれば良いか分からなかったので、生ビール2杯を飲して店を出た。

22時30分までまだ時間がある。渡船の待合所にある自動販売機に飲み物を買いに行ったら、ばばあが座っていて、別のばばあと話している。

別のばばあは、ばばあに「このお兄ちゃんは、決まっているのか」と耳打ちし、ばばあは「すぐに決まったよ」と答える。決まったも何も、私に選択権はなかったのだが。別のばばあは、「やはり男前は即決するね。醜男に限ってあれこれと選びたがって、中々決まらない」と言う。ここ最近聞いた名言の1つである。

2人がここに居るのは、女があと1人残っているので、客が上陸するのを待っているからであるということだ。

温泉があることは知っていたので、どこにあるのか、旅館に泊まっていなくても入れるのか問うと、1,500円払えば、入浴の一式を貸与してくれて、入れるという。他にすることもないので行くことにした。別れ際に、ばばあに明日のタクシーの件について、「ここに7時30分な」と念押しされる。

港や浜辺には、カップルや親子が沢山歩いている。売春島ではなく、普通の観光地だ。空を見上げると、北斗七星が見える。星を見たのは何年振りだろう。

温泉に行くと、旅館の客と勘違いされたようで、無料でタオルを貸してくれて、入浴することができた。綺麗な温泉で、賑わっていたが、塩っぽいお湯だった。

家に戻ると、1階では女がもう1人加わって、3人で談話している。私は2階に行って、時間まで布団の上に寝転がった。

22時30分になって、女が2階に私を迎えに来て、近くにあるアパートの1室に移動した。

私が何処から来たのだとか一通りの話を終え、明日は伊勢を観光する予定である旨を伝えると、女は明朝に鳥羽に帰るので、鳥羽駅まで車で乗せていってあげると言う。何故女もばばあも私を送りたがるのだろう。実はばばあにも誘われているのだがと、女と交わる前に面倒な話はしたくなかったので、女の誘いを快諾した。ダブルブッキングである。どちらにしようか。一晩考えて、明朝ばばあと話を付けよう。

女がシャワーを浴びて帰ってきた後、性交が始まる。ゴムフェラされた後、女のあそこを弄ると、濡れてきたので、正上位で挿入した。

ゆるい…。又、長い間ちょんの間ばかりでしており、久し振りにベッドでしたので、ベッドのスプリングがピストン運動に予測外の反動を与えることに気が付いて(布団だと、女をしっかりと固定することができて、女が無用に腰を動かさない限り、ピストンの動きは完全にこっちが掌握できる)、恐らく30分くらい腰を振り続けたが、いく瞬間は訪れなかった。

一時休戦。

それから暫く休んでいた。眠っていたようだ。どのくらい経ったのか分からない。女は隣で横になっている。起きているのであろうか。何か興奮してきたので、また性交することとした。

今回はあっさりといった。

何回でもして良い訳であるが、これで十分だと私と女は暗黙に合意したので、それぞれシャワーを浴びて、眠ることにした。

飲み足りないので、中々寝付けない。まだどこか飲み屋は開いているであろう。誘ったら、女は来てくれるであろうか。どうしようと逡巡しているうちに眠りに就いたらしい。

明朝7時頃に自然に目覚めると、横で女は眠っている。久し振りにぐっすりと眠ることができた。女もやがて起きて、2人で帰り支度をした後、アパートを出た。まだばばあと話す時間がある。

女は荷物を取りに行くから、先に待合所に行って待っているように言う。歩いていると、旅館の前で別れ際の男と女が居て、その女もタイ人であった。

ばばあが待合所で待っている。缶コーヒーを奢ってくれた。ばばあに女が送ってくれる旨伝えると、「なら、そうおし」と笑顔で答えて、数分後に来た渡船に乗って去っていった。船に乗るばばあの背中が淋しげに見えたのは、私の自惚れであろうか。

女がもう1人の女と一緒にやってきて、乗船する。振り返って島を見渡すと、港の両脇の旅館とホテルが繁盛しているのが分かる。どちらも大きくて、綺麗だ。その間にある旅館群は、あまり景気が良くないようだ。中には、廃墟となったままのものもある。

渡鹿野渡船場に着いて、女は近辺にある駐車場から軽自動車に乗ってきた。私は助手席に乗り、もう1人の女は後部座席に座る。

道中2人はずっとタイ語で何か話していた。途中でもう1人の女が「タイ語でごめんね。分からないでしょ」と謝った。私は「別に構わないよ」と答えた。何を話を話しているのか皆目見当が付かなかったが、少なくとも決して私が話題でないことは分かったから。

あくまで私が今回感じた印象であるが、この島の裏風俗もそう遠くない中に滅びるであろう。しかし、健全な観光地としては細々と生き残るのではないだろうか。全国各地で、男が追い求めてきた夢が、種々の要因によって急速に潰えていっている。時代がそうさせるのであろうし、そうあるべきであるのかもしれない。そんなことを考えていると、車は鳥羽駅に着いた。

女との別れは、バイバイを交わしただけで、昨晩初めて出会って、金銭と引き換えに一晩を過ごしたのは嘘であったかのように、まるで旧知の友人であったかのように、清々しいものであった。今日は快晴だ。5月の朝も清々しい。

GWの後半が始まったばかりだ。女は今晩もまた島に渡るのであろう。私はこれから伊勢にお参りに行くのだ。


南の島に1泊4万円







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