指令:玉砕せよ2

5000円伝説、その3である。輩の皆様は、捜査官がババアめがけてバンザイアタックを敢行する様を、 いまかいまかと心待ちにされていらっしゃるとのことで、そんな畏れ多いご期待に応えるべく、今日も捜査官は逝くのである。


マイナーな存在だと思っていたのだが、ネットや書物から、それなりに情報が集められた。恐らく、都心部に近いので、ちょっと行ってみたり出来るからだろう。

由来は遊郭。最盛期は150件の遊郭と400人の女がいたという。皆ヶ作にも40件があったとされる。神奈川県というのは、昔から遊郭が沢山あったようだ。既に訪問した川崎もそうだが、横浜や横須賀にも遊郭があったとされる。調べればキリが無いのでほどほどにしておいたが、中でも横浜は今でも大きな風俗街として生き残っている。

まあ、私は遊郭研究家ではないので、興味を持ったことしか調べない。興味とは、言うまでも無くセックスの事である。いくら横浜真金町や曙町が艶町として素晴らしい歴史を持っており、そういった建物が残っていようが、ヘルスが沢山あろうが、今現在非合法なセックスが出来ないのなら、私が行く意味はあまり無いのだ。

さて、ここ安浦の現在はどうなのだろうか。残念ながら、ここのちょんの間が生き残っている可能性は極めて低い。 調べた情報によると、5年前くらいから「絶滅するのは時間の問題」と言われていたようだ。


また、2000年頃の情報として具体的なものを入手できた。
”存続の危機に直面する『ちょんの間』”と題して、次のようにある。

京急安浦駅から国道16号線を渡って、南へ200メートルほど歩いた辺りが安浦『ちょんの間』街だ。 とは言え編集・イシハラを連れて最後に行ったのが、もう1年以上も前。すでに6.7軒しか残っていない 『ちょんの間』は、ポン引きに連れて行かれて、初めてその存在がわかる程度までに民家に埋没していた。 5千円でセックスが1発できるという究極の安さで、私についたのは40代のおばさんだったが、イシハラに ついたのは20代の可愛い女だった。

全国風俗紀行 四谷新 宝島社・絶版 より引用
「全国風俗紀行」は、改訂版が出ています→宝島社文庫「裏風俗の女たち 僕の桃源郷めぐり」 (宝島社文庫)


また、「赤線跡を歩く」の1巻 赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (ちくま文庫) に、写真が沢山掲載されている。本文には、この10年で殆どそういった建物は姿を消したと書かれている。




ま、とりあえず行ってみよう。



京急という私鉄に乗り、県立大学駅で降りる。昔は京急安浦という駅名だったらしいが、今は県立大学という名前になっている。



昔は漁港だったらしいが、そんな気配は全く無い。綺麗な高層マンションが立っており再開発埋め立ては90年代に行われたそうだ。

駅からは南へ1本の道が伸びている。たぶんこれだな。海と思われる方向に向かって歩き続ける。すると国道16号にぶつかる。これを越えると、正面〜左手側に高層マンションが見えてくる。街灯に照らされたアスファルトは黒光りして美しく、最近になって整備された道路であることがわかる。



近くの歩道橋に上ってみた。どうも、国道を越えた右手側はなんやら陰気臭い空気が漂う住宅街となっている。あっちか。行ってみることにした。あった、ここに違いない。再開発の手がすぐ傍まで迫っているという表現がピッタリ来る。





辺りを歩き回る。しんと静まり返っている。そのとき、ここに正しい目的でやってきた来た私を受け入れたくても受け入れられない、1時代を担った安浦の町が放つ最後の叫び。が聞こえた気がした。

それは悲しい叫びではなく、自らの役割を終えた満足さゆえの叫びであったはずだ。


もう、時代は変わったのだ。あと10年もすれば、ここに男と女のドラマがあった事を知っている人間は殆どいなくなるのだろう。

だが、こうしておけば、少なくともこれを見た人には伝えられるのだ。町の叫びは、こうして後世に伝えられるのだ。






捜査地点:ここらへん


捜査報告書:ああ、横須賀ブルース。



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