指令:名古屋でちょんの間に潜入せよ


名古屋の中村大門。名古屋にひっそりと息づくソープ街である。店舗数14軒。相場は20000円程度。

名古屋の繁華街と言えば栄や錦であり、箱形ヘルスの数とクオリティは全国一との呼び名が高い。それは巨大なグループにより、市場が寡占状態にある為だと聞く。ふつうは寡占化が進むと競争原理が働かなくなり、クオリティも下がると言うが、優秀な企業はそれでもクオリティを維持できるということか。これだけ店舗があればスケールメリットは凄まじいものがありそうだもんね。

そんな名古屋風俗の牙城を崩せるグループは存在しないとされる。私も、数年前に深夜のミナミの喫茶店でアイス珈琲をシバきながら、上官に名古屋進出の話をしてみたことがあった。向かいの席にいた高級将校は「あそこは押さえられているから岐阜や三重から攻めて行く」と言っていた。血気盛んだった私は一番槍が欲しかったので、違う商売で名古屋にアプローチしてみたが、確かにハードルは高かった。だから結局、自分も岐阜や三重から攻めることにしたんだけど。

また、自分の下に居たファイターは、「大阪なんかより、名古屋と京都で商売を成功させる方が難しい」と言っていた。まあ、そうかもしれない。「名古屋人、風俗に2万も3万も出さんがね」と言ったところか・・。


中村大門は、そんな名古屋の喧騒から離れた所にぽつんとある。いたって平和な時間が流れているような場所である。由来は遊郭。元々の名前が中村遊郭なので、現在でも「中村のソープ」「中村大門のソープ」などと呼ばれている。

中村遊郭が開かれたのは大正12年。昭和時代に全盛期を迎え、戦後は赤線、売防法以降はトルコ(ソープ)に移行している。大都市にしては珍しく空襲を生き残った建物が多く、現在でも遊郭時代の建物を見ることが出来る。そして今でも、「大門町」「羽衣町」「賑町」など、それっぽい町名がそのまま残っている。

その歴史があまりに正統派であり、当時の建物も沢山残っているので、全国の遊郭マニアから支持されている、いわゆる聖地のような場所である。ヤクザの事務所があるにもかかわらず、果敢に写真撮影を試みる人間も多数いるという。建物に興味のある人はネットで検索してみたらいいだろう。沢山のサイトがヒットする筈だ。

そういった由緒正しきソープ街であるが、歴史の深さと人気の有る無しは、残念ながら比例関係にはない。ソープに行きたい男は、よりクオリティの高いサービスを求めて電車で30分の店舗数64軒を誇る金津園へ行くだろうし、カジュアルなサービスを求める男は栄や錦のヘルスへ行く。中村大門のソープ経営者もそれはわかっているはずだろう。

新規出店はもちろん、改装も出来ないのなら、滅ぶしかない。そして、それは世論として支持されている。要は勝手に自然消滅してくれという話なのだ。いずれは集客は落ちていき、新商品の入荷も無くなり、建物は消えてなくなり、跡地は住宅街にでもなるのだろう。遊郭建築の一部は都市景観重要建築物に指定されているが、その建物の中からソープランドに使用されている物だけ消えて欲しいというのは、都合の良すぎる話である。

そういった部分も含めて、恐らく全国的に見ても最もブルースのあるソープ街ではなかろうか。「ニュー令女」とか、トルコ転業当時の名前のまま営業してるんですよ。もちろん建物は遊郭時代のものである。そこでセックスが出来る・・・凄いじゃないですか。行くなら今。もしかしたら明日には閉店しているかもしれない。もしかしたら最後の入浴客ということで「今日はもう好きなようにしてやって下さい」とか店長から言われるかもしれない。もしかしたら「あたし、最後のお客さんが白馬の王子様って信じてるの」とかプロポーズしてくる姫がいるかもしれない。こうなれば行くしかないだろう。全国のソープファンは今こそ立ち上がり、名古屋駅を目指すべきである。





さて、中村のソープが如何に素晴らしいものであるかの演説が終わったので、本題に入ろう。えー、私が潜入するのはソープではない(笑)。何を調べるのかと言うと、ソープ街に出没するポン引きババアと、連れて行かれる先で行われるであろうセックスについてだ。だって私は風俗捜査官ですから。怪しい風俗に潜入してスペルマを発射するのが任務ですから。最近は敵が手強くなってきて、サガミやバイアグラといったアイテムがなければ太刀打ちできない場合も多々ある。


夜12時過ぎ。名古屋駅から大門町に向かって歩く。ソープランドが閉まってからの時刻の方がいいだろうと思い、この時刻を選んだ。

実は、ここに捜査に来るのは2回目なのだ。1回目は今から数ヶ月前に訪問し、雨の中を調べて回ったのだが、怪しいスポットは発見できなかった。今日はリベンジということである。

駅から歩いて現場へ向かう。やがて大門のゲートが見えてくる。

 大門のゲート

虱潰しに通りを調べていく。人っ子ひとりいない。しーんと静まりかえっている。ずんずん歩くと、中村遊郭の説明時には、必ず引き合いに出される外資系のスーパーマーケットが見えてくる。

 スーパーのユニー

やはり何もない。やり手婆が出没するという情報もあったが、発見できなかった。怪しい宿泊旅館やビジネスホテルも発見できなかった。

帰る気がなかなか起こらない。今日は2回目の捜査。3回目はたぶんないだろう。そう思うと、隅から隅まで見ておかなければ気が済まない。




ない・・・・。





深夜3時。引き上げることにした。ふと前を見ると、遠くに赤い航空灯が瞬いている。名古屋駅のツインタワーだ。私が人生で初めて名古屋の風俗でスペルマを発射したとき、あの建物は無かった。時代は流れ続けているのだ。











捜査地点:ここらへん


捜査報告書:何も無かった。



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