ちゃりんこ学園の捜査をせよ
いまから8年前のある日。
岐阜県内で、許可を受けずに性的サービスを提供していた、
違法風俗店経営の男が逮捕され、警察は14日までに同様の店を対象に集中取締りを行い、
合わせて14店舗を摘発、12人を検挙しました。
逮捕されたのは岐阜県各務原市の風俗店経営、何某容疑者41歳です。
警察の調べによりますと何某容疑者は、ことし1月から8月までに、
関市や岐阜市、それに坂祝町の3店舗で、自らは風俗営業の許可を受けず、
他人名義を使って性的サービスを提供する店舗を経営した風俗営業法違反の疑いがもたれています。
川島容疑者は「ちゃりんこ学園」などの名前で、性的サービスをする通称「キャンパスパブ」を経営し、
少なくともおよそ10億円の売り上げを上げていたとみられ、警察の調べに対し容疑を概ね認めています。
このほかにも警察は、これまでに飲食店として風俗営業の許可を受けたにも関わらず、
性的サービスを提供していたキャンパスパブを対象に集中取締りを行い、
2つのグループが経営する岐阜県や愛知県にある合わせて14店舗を摘発し、
5人を逮捕、7人と1法人を書類送検しました。
売り上げはすべて合わせて、過去5年間に少なくともおよそ29億円に上るとみられ、
警察は売上金の流れなどについて調べています。
岐阜県内では幹線道路沿いの郊外に、同様の違法風俗店が増加していましたが、
今回の集中取締りで自主廃業を含め20店舗が閉鎖されました。
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201×年のある日。タレコミが来た。
〜〜○○県の○○の国道沿いに廃墟があります。そこに夜になると
年齢不明の女が座っています。立ちんぼらしいです。自分は怖いので実際に買ったことないですが。
トラック仲間のもっぱらの噂ではお値段1万円で廃墟でことに至るとのことです。
ちなみにその女は○○○〜〜〜○○で会話が成り立ちません。捜査よろしくお願いします。
場所は大体ここです。〜〜
ふうむ、これは。さっそく調べてみたら、この廃墟自体が複数の物件の集合体というか結構な規模のもので、廃墟マニアの中では割かし有名な物件みたいなのだ。
そして中に入るこもできるようで、内部状態がしっかりそのまま残っているらしい。
YouTubeにも廃墟マニアの動画として幾つかこの施設を捉えたものがアップされているので見てみたらいい。
私がこれを見てひどく興味をひかれた部分――なにやら動画におかしなものが写っているのだ。
おかしなものとは、なぜか使用済のコンドーム、これが落ちているのである。
撮影者は解ってか解ってないのか淡々と撮影しているが、これはつまりそういうことではないのか。
動画を見たら解るが、まだチンコから外されて3年も経っていない感じの新しそうなゴムじゃないか。
仮にこの施設がゴムを使用するプレイをしていたとして、営業終了した時期を考えるとゴムがもっと黒ずんでてもよいはずだ。
だから、そういうことなのだ。
タレコミと動画の内容が一直線に結びつき、私は居てもたってもいられなくなり捜査に出動することにしたのである。
かくして某日。
本田技研の自動二輪を用意すると、昼前に出発。名神高速を東へちんたら走って大垣で下へ降りる。大垣周辺の風俗店を見回った後、
国道21号へ入り、さらに東へ向かう。ロードサイトにおなじみの看板のお店が並び、
そこに紛れて風俗店もあるという中部東海地方っぽい国道を走り続けると名古屋方面への分岐が見えてくる。
そこを更に超えて進むと懐かしい東洋健康ランドの看板。
おお、まだあったんだな。
そうこうしてると今度は自衛隊の基地前を通過。なるほど、自衛隊の法則系か。これは今日の捜査にプラスに働く要素だな。
などと考えながら目的地近くまでやってきた。
たしか川にそった旧国道沿いだったと思うけど、どのあたりか。このあたりか……。
あ、あった。あれだ。目の前に廃墟群があらわれた。
国道沿いに
廃墟の向かいには、やっているかどうか不明な定食屋のような建物がある。駐車スペースがあるのでそこにバイクを停める。
奥には岐阜県の1級河川が流れている。崖のようになっており、柵はないのだが急斜面のため川辺に降りることはできない。物件自体が崖ギリギリに建っている感じだ。
背後は大きな川
荒れ放題
ふーむ。これは。
とくに人気はない。静まり返っている。国道を行く車の音が聞こえるのみだ。
場所と大体の雰囲気が解ったところでいったん撤収することにした。夜になるまで待つとしよう。
町の方へ戻り、とりあえずパチンコ屋へ。ハーデスの角台に心動かされたが、打てばこういう時に限って4桁乗ったりしそうなのでやめておいた。
ぶらぶら時間をつぶす。ネタが本物としても何時が営業時間(出勤時間?)なのか不明だが、
私の経験上、この立地での立ちんぼは21時以降25時までだと判断。特に熱いゾーンは21時から23時くらいだろう。
とりあえず21時に出発して21:30分に現地に到着するようなスケジュールにした。
さて。夜になった。手元のGショックは21:25を示している。昼間来た時とはうって変わって真っ暗だ。予想はしていたがここまで暗いとどうかな。
こんなところで立つか?? 期待度は25%くらいかな。
それでも財布から札を出してポケットに用意する。荷物をまとめて身軽になるといざ出発。
今日は写真用のカメラ以外にGOPRO(ウェアラブルカメラ)も持ってきているが、
真っ暗で映らないのでおいていくことにした。
最近は輩の皆様も世代交代が進み、すっかりスマホ世代になったので動画や鮮明な写真がないと何事にも興味を示してもらえないんですよ。
私なんかは映像よりもベトナムから生還した小説家なんかが緻密な言葉で描写した世界のほうが興奮するんですけどね。
そのメガネの小説家は、息をのんだとか筆舌に尽くしがたいとか書くのはせこい作家のやることで、
プロなら是が非でも伝わるように何としてでも文章にしなければいけないとか言ってたけど、
確かにこんなプロが考え抜いて書いたギリギリの文章は無駄なく綺麗だし伝わるし興奮すると思う。
いっぽう、私などが読者に伝わるように考えて書いたらそうはいかない。
通常とは違う勢いでチンコをマンコに入れたのなら放り込んだ、スペルマ発射が困難な中で発射したなら足をピーンと伸ばして発射した、
ババアのマンコが臭かったら酸っぱいションベンの匂いがした、というように子供の落書きみたいになってしまうのだ。
話がそれた。
詰め込み過ぎて膨らんだポケットを手で押さえながら
車に轢かれないように道の端をすすみ、車が途切れているので反対側へ渡っておく。
ずんずん歩くと、何かいる。人だ。視線の先には確かに女が一人いるのだ。
あっさり発見した。間違いないだろう。
こんなところに女が一人でいるわけがない。行けば解るがそういう辺鄙な場所なのだ。
トラックや車の騒音のなか、そのまま歩き続ける。
白っぽいカーデガンのようなものを着て山吹色というか謎色の膝丈のスカートを履いてた細身の女が立っているのが見える。
貧相という言葉がぴったりくる女だ。
距離10mくらいに近づくと女も私に気が付いたようで、こちらに向き直った。私は距離2.5mまで接近したときにいつものセリフで話しかけてみた。
この状況は売っているのであれば購入者が来たと100%わかる状況だから遠慮はいらない。
「遊べるの?」
「……」
女は無言で、首を縦に振った。無表情だ。
「いくら?」
「……」
やはり無言で腰の横で指を1本だけ立てる女。
女はひたすら無表情で無言だ。これはタレコミにあった通りなので私も無駄口をきかず女に従うことにした。いろいろ病気なのかな?
でも私もブルース症候群っていう病気だから気にしなくていいよ。病気どうしで中出ししたらクリトリスがチンチンになった子供が産まれるかもね。
それにしても顔色の悪い女だ。いや、顔色がわるいとうのは白塗りだからだ。
メリーさんみたいに真っ白に塗りたくっている。そして目がやたら小さく違和感がある。
年齢はいくつかわからないが……、いくつだろうか。
白塗りの顔は40くらいに見える。でも見ようによっては20代のようにも見える。
まあ、私は女の年齢を10歳くらい若く見てしまう傾向があるんでね。
皆さんにもさんざん指摘されてますけど。
過去のファイルでも当時の私には書いてあるように見えてたんですよ。
そんなことはどうでもいい。まあ、とりあえず年齢不詳ということだ。
そうか、目に違和感があるのは黒目だけがやたらでかいからだ。コンタクト入れてるからか?それから口がでかい。
顔のパーツがちょっとバランスとれていないのだ。その顔にカツラみたいな髪型の髪の毛がかぶさっているというのが女の顔を言葉で現したものだ。
なんか意味不明だが、これは私の表現力や語彙力が乏しいのではなく実際に意味不明で見てると不安になるような顔なのだ。
綺麗なのかと言われれば、あからさまに不細工ではないし、細身だから綺麗なのかもしれないのだが、バランスがおかしい感じなのだ。
私がそんなことを考えていると女が建物に向かって歩き始めた。おっと、さっそくプレイか。せっかちだな。
草が生い茂る、ひび割れたアスファルトの上を歩くと、宙を舞っているクモの巣が顔に張り付く。
昼間に下見してなかったらビビって前に進めないくらいだ。
なんて過酷な環境。しかし前を行く女は滑るように進んでいく。まあ毎日のようにいたらそんなもんか。慣れたもんだな。
ツル植物の葉っぱが絡まる観音開きの扉を女が開ける。扉はすっと開いたが、中は真っ暗。
当たり前だが外以上に真っ暗だ。開けられた入り口からの外光で少し先には壁があるのがわかる。
女は私の前を歩く。ここで私は女に密着して髪の毛のいい匂いを嗅ごうと思ったが、期待していたヴィダルサスーンやラックスの香りは無く、かわりに線香の臭いがした。
ババアにありがちな匂いだ。
建物の中は目が慣れるとかそういった状況ではない。入ってくる光は一切ないのだ。かび臭い匂いがする。
扉がしまると漆黒の闇になった。真っ暗だが外を走るトラックのかすかな音と私のブーツと床がすれる音だけが聞こえている。
4歩くらい前に進むと壁になるはずなので、そこで左に曲がる。
店内の状況はようつべの動画で事前学習済なので、間取りは大体わかっている。じゃなけりゃ絶対歩けない。
そのまま左へすこし歩けばブースが10ほど並んでいるはず。
とりあえず線香の匂いについて8歩進んだときに手探りでブースのヘリがわかった。ああ、もうプレイブースのところか。
私が止まったのでこのブースに入ることになるようだ。私の脳内イメージでは入り口リスト方向から入ってきて向かって右手側のブースのどれかの前にいる状況のはずだ。
手探りで腰を下ろす。女が奥に入って私がブース入り口側だ。
まあセクキャバみたいなイメージだな。それのスーパー暗い版だ。解る人は想像してくれたまえ。
タレコミにあったようにこの状況でプレイするのか。裏風俗史上最も暗いと言われた諫早のちょんのまを経験した者によると「
真っ暗闇で、女の顔はおろか全くなにが起こっているかわからない
、気が付けば昇天させられている、おそらく女は声からババアなんだろうと思う」という話だったが、しかしこれは。それ以上ではないのか。
暗いというか漆黒だ。変なにおいもするし。でっかいカラスの羽につつまれたらこんな感じなのかもしれない。
このときの心境は、なんというか次の展開が読めないので、おかしな雰囲気の中をとりあえず必死でついていっている感じとでもいうのか。脳内メモリが
環境対応に全メモリを取られてて他のことを考えてる余裕がないとでもいうのか。いわゆる「あれよあれよというまに」というやつだ。
とりあえず座ったところで手を出すと前のブースの背中部分にあたる。手を移動させて前ブースのヘリを確認。これで自分の現在位置を再確認。
まともな人間相手だと「凄いね」とか「青姦だね」とか会話するところだけど、そんなことは言うだけ無駄だと思ったので、足を広げて
プレイしやすいように準備する。
すると、なんだかズボンの上からなにかすられるような感覚があった。これはズボンを脱げということだと理解してジーパンとパンツをさげる。
その瞬間、股間に水をかけられたような感覚が! びっくりして「アヒャ」って間抜けな声を出してしまった。
「アヒャ」が反響した。ありえないくらい。
目を見張ると、暗闇の中で見えるはずのない女の目が浮かんでいる。黒目だけの目が。
その下に女の口が現れ、にやっと笑うようにゆがんだ。
そのとき、私は気づいた。全て気づいた。私はここに居てはいけない。ここは現実ではない。0.2秒で判断した。
次の瞬間には、パンツとズボンを上げると全力で入り口目指してダッシュした。
真っ暗闇で頭は驚くほど冷静、左へ向かって12歩分、そしたら右へ向いて4歩だ。12の4。それははっきりわかっていた。
ダッシュ! 急げ!
12歩かどうか頭ではわからないのだが感覚的にそれくらいだろうと思って右へ曲がる、したら1o程の光の筋が僅かに漏れているのが視認できた。
観音開きの扉の中央から漏れる光だ。
そのまま最短距離で扉に飛び込む、というか体当たり。
バーン
扉前に設置されているついたてを左にかわしたところで目の前を行く車のヘッドライトが目に飛び込んできた。
暗闇から出てきたせいか夜なのに妙に明るく見える。
後ろを振り返らず横断歩道まで出てくる。
おちつけ、おちつけ。おちつけ。
あれはダメなやつだ……。絶対ダメなやつ……。関わってはいけないやつ……。
横断歩道を渡ろうとするが車が途切れない。イライラする。おちつけ、こういうときに車に轢かれるんだ。ふうーーっと息を吐いて
、国道の先を見る視線を落とす。と、縁石の横をでかいムカデが1匹這っているのが目についた。
「出しゃばりやがって虫けらが!」
とっさに殺したい衝動にかられたのでブーツで思いっきり踏みつぶしたらちょうど車が途切れた。
左右をみて横断歩道を小走りに渡った。渡り切ると落ち着いて暗がりに浮かぶ建物を振り返るが、女の姿はない。
とくに追いかけてきたりはなさそうだな。
私はバイクのところまで戻ってエンジンを始動させると、スロットルを思い切りひねって一気に国道に飛び出した。
ミラーで後ろをちらっと見たが真っ暗で何も見えなかった。
捜査報告書:あ、そういえば金払ってないわ。