ソープランド 売春での初摘発

たまにニュースになるソープランドの摘発。たいていは売春防止法違反(場所提供)です。

日本国では売買春は違法ですが、ソープでは金を払えば当たり前のように性交が出来てしまいます。本来はセックスするところではないけれど(風呂屋だから)、たまたま女と客が仲良くなってセックスしてしまったと見なされているわけです。

もちろん見なされているだけですので、事業者はいつでもパクられる可能性はあるわけで、実際に摘発はそれなりの頻度で行われています。

売春防止法では買った客に罰則はありませんが、令和8年、「買ったほうも罰する」へ売防法を改正する機運が高まっています。目的は立ちんぼ対策でしょうから、ソープにはあまり関係がなさそうにも思えますが、改正が実現すれば摘発する側の選択肢が増えることになるのは間違いないでしょう。

ソープランド第一号を東京温泉とするのであれば、令和8年はその誕生から75年。トルコロジー(広岡敬一)の記述をもってすればソープで本番(性交)がみられるようになったのは、その誕生から10年後の昭和36年ごろ。当時のソープは都内エリアに集中していました(およそ70軒)。

※広岡効果を考慮して同年代の新聞をチェックしたところ、 昭和36年の読売新聞東京版において「トルコぶろ不健全営業めだつ」と題し、記事内では「個室で売春さえ行っているものがあった」と書かれているものがありました。トルコロジーの記述を裏付けています。

赤線廃止が昭和33年ですから、36年と言えばまだまだ売買春に寛容な世の中であったとも思えますが、実際のところ、ソープランド(当時はトルコ風呂ですが、ソープという言葉遣いに統一しています)はいつから売春防止法(売買春)で摘発されるようになったのでしょうか? 

まずこれまでの調べで、前提として、昭和41年まではソープランドは風営法で規制されておらず、設備等について許可は必要なものの、風紀上の影響については野放しの状態でした。 なので、法を改正して取締りをしていくべきであると国会でも検討されていたことがわかっています。ソープやヌードスタジオを取り締まるために、何とかしなければと動いていた時代です。

いい資料が無いかと探していたところ、性の国家管理(藤野豊)に「1965年7月27日、東京都葛飾区にある金町トルコの経営者が売春防止法の管理売春の容疑で逮捕された。これは『トルコ風呂』業者の売春防止法違反による最初の逮捕となる。」というズバリな記述がありました。当時の新聞を探ってみますと、該当する記事が見つかりました。




(朝日新聞 昭和40年7月28日 朝刊)

警視庁保安課は27日夕、東京都葛飾区金町3-2136「金町トルコ」経営者何某こと何某(37)を売春防止法違反(管理売春)容疑でつかまえた。調べによると、何某は去年秋ごろから十数人のトルコ嬢を使ってトルコぶろを経営、トルコ嬢の何人かに個室内で売春をさせていた疑い。業者が売春防止法違反でつかまったのは初めてである。

朝日新聞ですが、「初めて」と書かれていますね。 金町トルコとは、3年ほど前に閉店した金町のソープです。 ※経営者の名前は消しています。「こと」というのは外国籍だからです。

これが売防法での初摘発と思ったのですが、当時のソープランドを規制しようとする流れを追っていく中で国会答弁を見ていたところ、次のようなやりとり部分が気になりました。

第46回国会 参議院地方行政委員会
○国務大臣(早川崇君) トルコぶろ及びヌードスタジオ等につきましては公衆浴場法、興行場法と、それぞれ法律に基づいて措置することが適当であると考えております。また現状におきましても、トルコぶろで売春行為というようなことが実際具体的に見つかりましたならば、売春禁止法、また児童福祉法、労働基準法その他の関係法令で取り締まることもできるわけでございます。

○国務大臣(早川崇君) 全然関知を私はいたしませんが、公衆浴場法というのは厚生省所管になりまして、その法律の中でトルコぶろというものの基準は条例で定めると、こういうのですが、その条例ができてないのだそうです、聞いてみますと。その問題に関連したのかもしれませんが、警察庁当局としてはトルコぶろを扱うというのは所管違いでもありますし、われわれはトルコぶろを利用して売春行為をやっておればどんどん摘発できる法律的根拠も、ございます。法改正の日程には全然のぼったことはございません。

【意訳:ソープは風営法では取り締まれないが(風俗営業ではないため)、ソープにおけるおける売買春は売春防止法、児童福祉法、労働基準法で取締ることは可能じゃあないですか。ちゃんとやりまっせ。】

○政府委員(大津英男君) トルコぶろにつきましては、私どもが調査しておりまするのでは、現在全国で三百九十軒ほどのトルコぶろの営業所がございます。大体従業員が七千二百名程度おるということでございます。このトルコぶろのうちにおきまして公衆浴場法の許可を受けておるもの、それから旅館に付随しておるというようなことで旅館業法の許可を受けておるもの、こういうものがあるわけでございまするが、その営業に関しましてまあ御指摘のような問題も中に起こっているというようなことで、これに対しての取り締まりということも、警察としてはいろいろ苦心をして行なっておるという状況でございます。ただ先ほども申しましたように、売春防止法違反というものを検挙いたしまするにつきましては、個室の中において行なわれるということで、非常に立証がむずかしいということで、その件数もまことにわずかしかないわけでございますが、その他の、先ほども話が出ましたが、婦女子に対して心身に有害な行為をさせたというような意味で児童福祉法違反とか、あるいは有害業名の職業紹介をしたというような職業安定法違反、あるいは公衆浴場としての許可を受けていないというようなことでの法違反、あるいは労働基準法違反、こういうようなその他の法律も活用いたしまして、警察としては取り締まりをやっている、こういうような状況でございます。

【意訳:いや、売買春があっても売防法ではできませんがな。】

といったやり取りですが、ここで気になる部分があります。

「その件数もまことにわずかしかない」

売防法で取り締るのは難しいが、検挙数は0ではないと読み取れます。

このやりとりがあったのが昭和39年です。朝日新聞の初摘発記事が昭和40年ですから、それ以前に摘発例があったのではないか? ということで売春防止法施行の昭和33年から39年までの新聞をチェックしてみます。
すると、読売新聞でこれを発見しました。 昭和35年10月29日、浅草の国際トルコセンターです。 「売春容疑でトルコブロ手入れは全国で初めて」と書かれています。



(読売新聞 昭和35年10月30日 朝刊)

おそらくこちらが初のソープランドへの売防法適用ではないかと思います。

朝日新聞が意図してガセネタを発信したのではなく、昭和35~40年のあいだ、ソープランドにおける売春防止法での摘発は殆ど無かったのでしょう(まことにわずかしかない)。

朝日の記事の2カ月後には全国一斉取締りがありますので、もしかしたらニュースにすることでの世論喚起や摘発の事前演習的な目的もあったのでしょうか? それにしては記事の扱いが小さいし、深読みし過ぎでしょうか。

10月の全国一斉取締りでは、全国544軒のソープのうち、154軒において売春防止法、風俗営業法、児童福祉法その他の違反があり、うち70店では売春があったと報告されています。

風営法が改正され、ソープランドが風営法で規制されたのは、この翌年の昭和41年です。(官邸裏ソープランド計画に佐藤栄作が激怒したか、というあれです

売防法の施行が昭和32年(実質33年)、 ソープランドが「売春」で初めて摘発されたのはおそらく昭和35年、 その後も取締りがなされてはいますが、いっこうに本番(売春)行為は無くならず、 やがてソープランドでは本番行為は無いという前提でほぼ100%本番できるという意味わからん状態になりました。

売春防止法だけではなく、風営法は改正が重ねられ、都道府県条例もソープを締め出すように改正され、現在に至っていますが、 肝心の本番(売買春)については自由意志であれば黙認されるというガバガバ状態であり、 また、あくまで処罰対象は管理売春であり、客と女は単純売春であるため処罰されません。 「ソープでは売買春が出来る」という部分は変わらずに続いています。

わざとギチギチではなくガバガバにしてあるのだと思いますが、 冒頭に述べました「買った側にも罰則を」は、このガバガバを締める劇薬になるのでしょうか。


参考:
朝日新聞1965/7/26
読売新聞1960/10/30
読売新聞1965/10/29
読売新聞1961/5/25
性の国家管理
国会会議録


作成:令和8年5月




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